殺風景な店舗内装で無造作な空間を。訪れるたびに違うものを感じるバー

天井には配管パイプが剥き出し状態で張り巡らされ、壁面はブロックが積まれたままの状態で塗装も何も施されていません。

グレーのブロック塀の前にはプロジェクターで60年代の映画が流れており、昔のヨーロッパを感じさせる空間です。

殺風景で無機質なブロック塀に囲まれた空間で飲んでいると、スマホやタブレットをいじっている人たちが異質な生き物に見えてきます。そのガサツでぶっきらぼうな店舗内装は、「ここは、あなたたちのような進化系アイテムにかぶれた人たちが来る場所ではないよ」と強く主張しているように感じます。どんなデザインも恣意的に感じてシラけてしまうため、あえてデザイン性のない無造作な空間にすることによって、店舗側が主張するのではなく、客の方から主観的に何かを感じ取ってもらう、しかも毎回訪れるたびに感じるものが違ってほしいというオーナーの願いがあります。

たしかに、そのバーを訪れるたびに、感じるものが毎回違います。日常のネット社会の喧噪から解放された安堵感であったり、何もないところで純粋にカクテルだけを楽しんだり、何も考えずボーッとしたり毎回違った感覚にさせてくれます。人間は何もデザインがない店舗内装であっても、自分の中から自然とさまざまな感情が湧いてくるものなのです。