駅近にカフェを切望する声が多くある中、自ら運営に立ち上がった施主様がご相談にみえました。居抜きのスペインバルをカフェに改装したいとのご希望でした。程よい広さの案件がなかなか出ず、予定よりだいぶ大きなスペースになりましたが駅近1階の好条件です。
当初はイタリアンレストランだったそうです。経年の汚れや傷みはあるものの、漆喰の壁、木の梁、レンガの腰壁、テラコッタタイルとフローリングの床、と自然素材をふんだんに取り入れた贅沢な内装でした。予定の倍以上の広さでしたので、できるだけ生かせるものはそのまま使うことで費用を抑えるようにしました。
しかし居抜きとはいえ、厨房のレイアウトはカフェ仕様に設計変更しなくてはなりません。間取りは変えずとも、厨房機器の内容が大幅に変わることで既存の給排水配管のやり直しは必至です。今回厨房内は天井、壁の骨組みを残し全て解体することになりました。厨房機器も全て処分してもらいました。新しいグリーストラップを設置し新しいボードにステンレスも貼り替えました。白い塗装で明るく清潔な厨房に生まれ変わりました。
居抜き物件の場合、給排水ガス電気など見た目ではわからない設備部分の劣化や詰まり断線などがあり得るので要注意です。また、残置された厨房機器の動作確認も必要です。壊れていた機器の修理や処分でかえって高くついてしまったということも起こり得ますので、居抜きは安上がりと一概にはいえません。
客席の天井と壁の漆喰は汚れや黄ばみがあったので上から塗装をし直しました。状態の良い化粧梁、腰板、巾木はそのまま残しました。床のフローリングとテラコッタタイルの汚れは自然素材の経年による風合いとするにはちょっと厳しいものがあったので全て剥がしました。明るいフローリング調の塩ビタイルに貼り替えました。入り口入ってすぐにあったバーカウンターも作り直し注文からお渡しまでの動線をまとめました。セルフサービスが基本なので、お客様にカウンターまで来てもらうスタイルです。作り付けのオープン棚には扉を兼ねたメニューボードを取り付けました。ディシャップカウンターとカフェカウンターそばには食器類の返却台を製作して設置しました。下にゴミ箱が入るようになっています。客席はおひとり様席のほか、お子様連れやグループにも対応できるベンチ席も設けました。以前バルに併設されたお花屋さんだった17㎡のスペースは、時間貸しでのフリースペースになりました。駅前でアクセスも良いのでビジネスにも、少人数の集まりにも、使い道はこれから無限に広がりそうです。
外装は既存のオーニングテント生地をカフェ風の生地に貼り換えました。併設のフリースペースは色違いです。花壇の植栽は整理して防草シートと砂利を敷き椅子を置けるテラスを一部に設置しました。間口が広くガラス張りなので程よく中の様子がうかがえて店に入りやすくなりました。
地域の方たちの念願だった「気軽に立ち寄れるカフェ」。美味しいコーヒーと心地よい場所を提供したいという施主様の思いがようやく形になりました。
ご依頼内容/カフェの設計・施工
物件内容/RC造6階建て1階部 101.89㎡ 30坪
竣工/2023年9月